子供たちの乳歯が永久歯に生え代わる時を思い起こせばわかるが、乳歯が抜け落ちようとする頃には、すでに永久歯はかたちを成して生える準備を終えている。
健康な状態である人の髪の毛も、歯が生え代わるメカニズムと同じである。髪が自然に抜け落ちる数力月も前から、脱毛する髪に代わる新生毛が頭皮の下で育っている。
「髪は抜ける時に種を残す」というまことしやかな説があるが、前述のとおり健康毛の寿命がきて抜ける場合、その下で新しい毛が生え出るための順番待ちをしているわけで、種などという曖昧なものは存在しない。
ホオジロザメを筆頭に、人間を襲う鮫は獰猛で、海中の嫌われものであるが、その鮫の歯は独特な構造になっている。鮫は獲物を噛むとき、全身を震わせながら食いちぎるので、歯がよく折れる。すると内側に畳まれていた新しい歯が起き上がって折れた歯の隙間を完全に埋めてしまう。
しかも、内側に折り畳まれている歯は、何層にもわたって下から順に成長しながら、役割を果たす順番を待っている。歯は獲物を捕って生きる鮫の生命を維持するのに必要不可欠なもので、歯がなければ鮫は獲物を捕ることもできず、生きてゆけない。
鮫の歯の再生は、生命維持のための神秘的なメカニズムであり、大自然の摂理といってもよい。
鮫の歯の構造を、人間の髪の毛の仕組みに当てはめて考えることができる。人の髪の毛は抜けるとき、その下にはすでに新しい毛が存在しているのである。